短編集

著 : 結城 奈々

あの日のUFO


 ある日、僕が部屋にいると窓の外から奇妙な音がした。

 聞いたことのない、何かが浮遊しているような音。

 その音が気になった僕は、カーテンを開けて外を見てみた。

 すると空には、キラキラ輝く円盤状の物体が浮いていたのだ。

 人工的なライトの光とはどこか違うような光を放っている、そんな感じがした。

 僕はその物体が浮遊していること、キラキラしていることに驚き、その物体に見入ってしまった。

 暫くすると、その物体は辺り一面に眩い光を放った。

 つい、僕は眩しくて目を閉じてしまった。

 僕が目を開けた時には、すでにその物体はいなかった。

 どこか遠くへ移動したのか、それとも瞬間移動のようにパッと消えてしまったのか、僕には分からない。


 謎の物体が消えた後、僕はハッとなって、さっきの出来事を頭の中で何度も思い出してみた。

 物体を見た直後はただただ驚くばかりだった。

 けれど今となってはあの物体はなんだったのか、なぜあの物体は僕の部屋のそばを飛んでいたのか、

 という疑問が浮かぶばかりである。

 ふとその時、僕の頭の中をある思考が横切った。

 もしかしてあの物体はUFOと言われているものなんじゃないだろうか?

 そんな未知の物体を見たのだと思うと、僕の胸はドキドキした。

 そして、僕の脳裏にはさっきの光景が焼き付いて離れなかった。

 だからそれから僕は、おそらくUFOであろうあの物体について、手がかりが得られそうな事をたくさん調べ続けた。

 本をたくさん読み、インターネットも使って、少しでもUFOと関連がありそうなことなら隅々まで。


 そして、あのUFOを見てから数十年が過ぎた。

 大人になった僕は、未だにあのUFOの事が忘れられずにいる。

 だから僕は、長い年月をかけて、あの時見たUFOにそっくりなマシンを作っている。

 このマシンの全て、設計書やエンジン、時空を超える機械は僕が考えたものである。

 このマシンが完成したら、僕はあのUFOをもう一度見る為に過去へ行こうと思う。

 その出発日は、間近に迫っている。



 僕は間もなく知る事になる。

 僕があの日見たUFOの操縦士は、未来の僕であったということを。



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