吸血鬼

著 : 秋山 恵

継承



 標的が急に立ったのに慌て、その男はうっかり引き金を引いた。

 サイレンサーが乾いた音を立て、銃弾が相手の腹部に吸い込まれるように命中する。人の家の庭先だと言うのに、うっかり

「あっ!」と声を出してしまい、口を塞ぐ。

 周囲を見回し、何も反応が無いのを確認すると大きく息を吐き。再度スコープを覗いた。

 標的はブランコの向こう側に倒れたようだ。その隣で先輩ハンターが拳銃を抜いているのが見えた。先輩ハンターは、相手の方に銃口を向けた時、足をすくわれて横転する。手前にある隆起した部分が邪魔になって向こうでどんな状態になっているのかが見えなかった。

 次にもう一度標的が見えたら再度狙撃するつもりで、息を殺したままそちらを見続ける。



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