ショートショート

著 : 秋山 恵

鳥頭


「あ、来たね。早速だけどこれなんだ」

「ほぉ、それが。高級感溢れてて、細部までこだわって作りましたね」

「何、ただの リモコンだよ。ただし、テレビやオーディオじゃない」

「ほぉほぉ、リモコン。まさか、どんな機器にでも使える魔法のリモコンか?」

「いやいや、そんなチンケなものを動かすわけじゃない。これはな、人間のリモコンだ。おぉい、そんなしかめっ面するなよ」

「と言ってもなぁ、人間を操作する訳だろ。それがあれば何だってやり放題じゃないか。戦争にだってボタン1つで勝てる。悪魔の機械だな・・・」

「はっはっは、残念だが、機能はそんな高度じゃない。これは人間の体感速度を操作するのさ。しかも、早送りとスローだけ」

「なんだ、それだけか。しかし、危険じゃないのか?早送りをしてボタンが壊れて止まらなくなったりとか・・・」

「安全装置が付いてるから、早送りしっぱなしで人生すぐ終わるとかはないよ。安心してくれ」

「ふむ、しかし、どうやって実現したんだ?」

「ああ、説明しよう。ただし、詳しい説明は省くよ。このリモコンは、頭に特殊なチップを埋め込んだ人間にのみ効果がある」

「怖いな・・・。頭切り開いてチップを埋め込む訳だろ。そんなの、死んだって嫌だぜ」

「大丈夫、ナノマシンが運べる程度の極少サイズで、今言った通りナノマシンが運び込む。だから痛みとかは全くない。鼻から入って、数時間以内に特定の箇所に辿り着く。そうしたら、決められたリモコンを使って早送り!厳しい仕事もあっという間に終わるって寸法さ」

「ほぉ!それは革命的だ」

「ただし、記憶はノーマル再生と同じだから、思い出すと嫌な思いをする。そこでこれの登場だ。メモリークリーン!少し前の記憶を消し去ってくれる。そのまんまだとか言うなよ?」

「いや、そのまんまだろ。で、どうやって使うんだ?」

「このボタンを押すと・・・、


 あ、来たね。早速だけどこれなんだ」



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