ショートショート

著 : 秋山 恵

エコ


「やぁ、来たね」

「来たよ。今度は何を作ったんだい?この間みたいなのは勘弁してくれよ。君の嫁さんが気が付いてくれなければ、あのまま数日繰り返していたかもしれないんだ」

「いやぁ、すまない。何とかと天才は紙一重だからね。ああいうミスも起きるさ」

「自分で言うなよ」

「そうだね」

「で、何を作ったんです?」

「そうそう。これを、これを作ったんだ」

「むぅぅ・・・、前回見たものと全く同じに見えるのだが」

「ハッハッハ。それはそうさ。入れ物は前回のものを流用したからね」

「ふむ。しかし、高級感溢れるこの外観はボクも好きだよ。使い回しは良いと思うね。流行のエコだよ」

「そう、そのエコだよ。これは、向けたものを再利用出来るように、その向けられたものの時間だけを戻すのさ。これを見てくれ。私が使った髭剃りだ。ざっと半年使い続けた」

「何そんなに使い込んでるんですか。そんなに使ってたら剃れなくなるでしょう」

「いや、そうでもないんだ。意外にジョリジョリいってくれるもんなんだよ」

「そりゃまぁ、本人が剃れるって言うなら、ねぇ・・・」

「それは置いといて、だ。今回の実験が成功すれば、私は髭剃りを今後ずっと買いなおさなくて済むようになるんだよ。勿論、これは君の髭剃りの刃を戻すのにも使ってもらって構わない」

「そりゃ助かるね。ところでふと思ったんだ。この機械を、財布に向けて使ったらどうなるんだろう?もしかして、今後働かないでも済むようになるんじゃないか?もしそうだとしたら、君、これは大発明だよ」

「な、なんと!それは気が付かなかった。確かにそうだ。例えば大きな買い物をした後に、これを財布に向けて使えば・・・、きっとお金が戻って来るはずだ」

「ドキドキしてきましたよ。ちょうどさっき、ここに来る前に高級なワインを買ってきたんだ。あぁ、勿論君と飲むためだよ。実験に付き合うから、早いトコ終わらせて一緒に飲もうじゃないか」

「そうだね。それが良い。それでは、その財布をここに置いてくれたまえ」

「よしきた。これだ」

「随分ずっしりした財布だね」

「そう言えばそうだな・・・。なんでこんなになってるんだろう。いや、そんなことは良い、その機械を使ってみてくれたまえ」

「ふむ。それでは、このボタンを・・・


やぁ、来たね」



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