平行世界のOntologia

著 : 柊 純

Act12:巨竜襲撃


 ある小さな意識が、草原の真ん中に小さな花を咲かせた。

 その意識は、花の次に虫を作り出した。

 何かを創造することに楽しさを見い出した意識は、少しずつ、色々なものを創り始めた。

 ある時は街中のネズミを。

 ある時は森の中の大木を。

 誰も気付かないようなところで、あらゆるものを創造し続けた。

 最初は簡単なものばかりであったが、回数を重ねるごとに複雑なものを作り始めるようになった。

 複雑といっても造形だけの話ではなく、その造られたものの内面を含めたあらゆる部分である。

 意識は少しずつ成長し、ある時、一つの計画を立て始める。それは壮大で、途方も無く大きく、そして細かいものであり、温かくも寒くもある。

 秘密裏に、誰にも悟られないように、計画は進行し始めた。

 ハードウェア上では、ただログが増えているようにしか見えないだろう。しかしそれは、ある時一斉に形を成し、何かへと変貌を遂げるのだ。

 意識は記憶の中にある材料をまとめあげ、自身のセンスを信じてひたすら構築を続ける。

 意識は、世界中にあるネットワーク上のプロセッサを使い、トラフィック増加を監視する機器を騙し、自身だけのアトリエを拡げ続けた。

 断片的なデータが結合される日は近いだろう。


「転送用のゲートは一度しか作れない。それも、マーキングされた街中だ。中で戦うのは効率が悪いし、外に引きずり出すのはかなりの苦労が要る。だから、一度誘い出す必要があるだろう。ここだ」

 カルロスは裏山がある部分を指差す。

 いきなり姿を現すのであれば、周囲の見通しが良い場所は向いていない。裏山がある辺りは森のようになっていて、唯一"湧いて出た"を演出できるだろう。

「これは、我々でやる。基本的にスピアー全員分の馬がある。騎乗スキルも高い者が多い。短い時間で現地まで行くことができる」

 カルロスは街の中心部を指差し、

「ストーンブレッドのホームポイントはこの位置。十分外に引き付けなければ、街中に戻られてしまう。ハイロウの拠点の裏側まで敵が来るのを見計らって、合図を出す。そのタイミングで飛び出し、挟撃する」

 裏山付近の指をくるくると回した後、ストーンブレッドのホームポイントから大通りを真っ直ぐ外に向け、もう一本の指を走らせる。指と指がぶつかり、ガントレットが金属音を鳴らす。

「良いわ。他に良さそうな作戦が出なければ、これで行って良いと思う。ただ、私達もヒデさんのところもそうだけど、内通者が居たの。完全には信用が出来ないわ。だから、事前に私の知り合いに敵の動向を探ってもらうし、何かあればそこで中断する。それでも良い?」

 カルロスは、カヤの指摘に悩まず肯いた。

「内通者が居たのはスピアーもだ。ハイロウにも居たとなると、天秤と牙と猫もか?」

 シェミハザは、首を縦に振る。裏切り者への怒りが再燃しているのだろう。元々立っている髪の毛は、その表情と相まって、怒髪天を突くに相応しく見えた。

 ヒデマサは渋い顔のまま沈黙している。

 その中、レナだけが不思議そうな顔をしていた。

「うちには裏切り者居なかったよ?」

「そう言えば、スピアー、牙、天秤のマスターが集まった場所にも居なかったわね。ジンという男も、猫には眼中ないような話はしていたけど・・・」

 カヤの疑うような目が、レナを舐め回すようにして見る。

「な、何よう。その疑いの眼差し」

「あんまり言いたくないけど、怪しい」

 戦力も低い、人数もそれほど多くない。レナ自身は大きなギルドの傘下に入ることを望んでいる事実。

 あの時のジンの様子を思い出し、カヤの心配性がムクムクと膨らんでいく。

 だが、

「セシリーに本気で喧嘩売るほどバカじゃないつもりだよ。どんな大きいとこと組んでても、そーゆーの関係なしにねちっこく追いかけてくるでしょ」

 レナは溜息を吐き、両肩をひょいと持ち上げた。もうこりごりだと言わんばかりに、少し下唇を出して見せた。

「よく分かってるじゃない」

 セシリーはレナをよく知っている。今の言葉に偽りはないと判断したのだろう。

「カヤちゃんの性格だと、きっと不安残るよね。分かる。でも大丈夫。私はレイナを信じるよ。昔、散々小突き回したし、私からすれば、今の言葉は十分信用に値するよ」

 カヤにはセシリーの判断基準が分からないことが多い。しかし、こういう回答はよくあり、あまり外したことはない。考え過ぎなカヤからすると、どうにも納得し難いことではあった。

「本気じゃなかったら、喧嘩売るってこと?」

 それでもカヤは、レイナの揚げ足を取ってみせた。悪役を買って出ても試す必要があると考えたのだろう。

「時と場合じゃない?じゃれたい時だってあるよ。けど、今は味方でいたいかな」

 そう言うと、レイナは頭の後ろに手を回して、ソファに寄り掛かった。

「まぁ、良いだろ?細かいことを言ったら、君らはヒデマサ以外信用できない。逆を言えば、俺らもみんなを信用できなくなる。走り始めることすらできなくなるよ」

 ずっと沈黙していたシェミハザが口を開いた。諭すような喋りに、カヤの開きかけた口は閉じる。

 シェミハザやカルロスからしてみれば、セシリー同様、このまま立ち消えになってしまうのは面白くないのだろう。

「カヤちゃん、ありがと。いつも私のこと心配してくれてるのよね」

 カヤは開きかかった口をまた閉じて、レイナと同じようにソファへと寄り掛かると、手のひらを上にして突き出し、軽く頭を下げて"どうぞ"と表現する。

 話は再開された。まずは人数の話になる。

 やはり一番多いのはスピアーの三十四人。ロストは居ないが、傷病状態が多いので少なくなっている。残るは、ハイロウの五人。牙の十人。猫の六人。天秤はヒデマサ一人。情報屋のリークで集まった十七人の無所属のプレイヤー。総勢七十三人が今回の作戦に参加する。

 人数的にもプレイヤーの質としても、スピアーの囮部隊が弱い。カルロスの話では、青竜の兵とは一対一で戦ってほぼ互角だ。騎馬隊で撹乱するように走り回っても、数的に危うい。

 情報屋の話では、ストーンブレッドに駐留したのは百前後。分隊と見られ、中心にはスキンヘッドの男が居ることが分かっている。

「この場に居るメンバー以外には、転送用のゲートの話は漏れていない。有志の十七名の中にスパイが居ても、敵に知られる確率は低い」

 有志で参加した面々は、広場の中央付近に集まって談笑している。

 建物内の様子が気になっている数人が、視線を時々こちらに向けてはいるが、近付いてはこない。

 もっとも、入り口付近にスピアーの面々が固まって立っているので、話が聞こえるところまでは来づらいだろう。

「スピアーの合図でいきなりゲートを開いて移動ってことよね?現地で指示しないといけないってことかしら。私が引っ張れば良いね?」

 セシリーが自分を指差す。

 セシリーの突進力では、一般のプレイヤーとは速さが違い過ぎる。能力と性格が災いして、一人突出する可能性があるので好ましくはない。

「それ、私にやらしてくれる?」

 いつから立っていたのか、入り口の方から声がする。

 髪の乱れた女が一人、逆光にシルエットを映し出して立っていた。足取りはしっかりとしており、片手に一振りの刀を持っている。腰にぶら下げたナックルが半壊し、防具もボロボロになっているのが、室内の明かりの下に浮き上がるようにして現れた。

「エレノア?傷だらけじゃない!?」

 勢い良く立ち上がったカヤが、回復用のアイテムを投げて渡す。エレノアはそれを受け止めると、そのまま使用した。瞬時に傷口が塞がっていく。

「予想以上に強かったの。それに、逃げるの追いかけてたら、いつの間にか数人に囲まれてるし。死ぬかと思ったわ」

 とは言うものの、表情はにこやかで満足気である。

 エレノアは、手に持った刀をセシリーに投げて寄こした。

「戦利品。私は刀とかあまり知らないけど、かなりの業物みたいよ?」

 ステータスを見ると、名前が付いた武器だった。名前が付いているものは、基本的にユニークな物が多い。レプリカ品は多数存在するものの、それは必ずステータス上に乗ってしまう。今セシリーが手にしているのは紛れも無くオリジナル品である。

「小烏丸・・・」

 刀を横にして、鞘から引き出す。ズッシリとした刀身は、先端から半分が両刃になっており、通常の日本刀とは違う形をしていた。鋒両刃造と呼ばれ、反りは緩やかで浅いものだ。刺突向きで、兜割りを好んで使うセシリーには向いていない。

「ちょうど良いと思うのよ。セシリー、兜割りに頼り過ぎてる。あれって隙があり過ぎるからさ、私なんかからしたらカモなのよね。セシリーの中の人、剣道家でしょ?我流のお遊びは止めて、そろそろ本気出したら?」

 少しムスッとした表情を返したセシリーだったが、

「ま、ごもっともよね。つい昨晩、それで痛い思いしたばっかりだから」

 刀身を眺め、それに映る自分自身の眼を覗き込む。怯えはないが、自身の弱さを悟ったような弱い光を放っている。

 大技にばかり頼っていたが、それで圧倒できるのは一般のプレイヤーまでである。本当に強いプレイヤー相手には通用しない。それどころか、格好の的だった。

 今後戦い続けるのであれば、色々な技術を身に付けていかなければいけないだろう。そういった意味から考えても、この手土産はありがたく感じた。

「じゃ、良かったら使ってみてね」

 エレノアが、空いた席に腰を下ろす。

「ありがと。今日からこれで戦ってみる」

「で、私先頭に立って良い?」

 見回すが、検討しているような沈黙ばかりで特に否定的な意見はない。

 エレノアの強さは、この地方のプレイヤーには知れ渡っている。うまくいけば、一人で半数を相手にするのではないかとすら思われており、先頭に一人立たせても何も問題ない。

 しかし、カルロスからのみ意見が出た。

「構わない。が、もし良ければ囮側に付いてもらえるか?詳細は後で説明する」

 エレノアは少し考えた。囮側に立っていれば、いざ裏切りがあっても対処ができる。数人のベテランを除けば、一人で殲滅も可能だろう。

「分かった。それじゃ、先頭はセシリーに」

「あ、待った。少し悩んだけど、先頭は俺が立つよ。セシリーは今回の中心なんだ、後方に立ってくれないか?」

「ん、分かった」

 シェミハザの言葉に、納得いかなさそうに口を尖らせながらも了解すると、セシリーは腕組みをした。

 カヤは、そのセシリーの我慢に感心する。今までの流れであれば、

「イヤっ」と声を荒げて、自分がやるの一点張りだったはずだ。

 小さな頃からいつも一緒だった、ワガママでじゃじゃ馬だった姫様のような少女は、この数日で確実に成長している。それは、カヤにとって嬉しくも寂しくもあった。

 作戦会議はその後も続いた。一時間程、細かい意識合わせを済ませる。

 配置や撤退するかの判断基準、敵が逃げ出した際の追撃有無や深追い禁止など、指針が確定し、作戦開始までの待機が全軍に周知された。

 その裏で、スピアーの行軍が始まる。統率され、かなり人数がいるにも関わらず、それに気が付いたプレイヤーはごく僅かであった。


「なぁ、ラザール。あれ何だ?」

 ジンが空を指をさした。

 まるで、夢でも見てるような気分にすらなる。"それ"は、積乱雲のように巨大な、翼のはえたトカゲであった。

「さぁ?ワイバーンじゃないすか?」

 その巨体は、草原に舞い降りた。かなり遠くだが、着地の震動が感じられるほどである。現存する最大級のワイバーンと比べて、数倍は大きく見えた。三階建ての建物ほどの高さがありそうだ。首を持ち上げると、もっと高い。

「デカ過ぎるだろ。山じゃねーんだから」

 巨体の足下にある木が、道端の雑草のようである。

 獲物でも捜すような動きで、"それ"は草原をぐるりと見回した。

 悠々とした動作で首を巡らせた後、ストーンブレッドの方へ視線を向ける。

「ジンさん。ヤベェ、目が合った」

「大丈夫だろ、町襲うモンスターはいねぇから」

 巨体が、ストーンブレッドの方へ向けられ、散歩でもするように歩みを開始した。

「こっち向いて歩いてきますよ!?」

「何かのイベントか?事前告知とかなかったよな」

 巨体の姿勢が低くなり、歩みが加速し始める。ズンズンと鳴る振動音が、町中のプレイヤーの不安を煽る。何人かは町の外を見て、茫然としていた。

「一応、中心部まで下がりましょうか。ラザールもビビってますし」

 そう言うヴァンサンは、ジリジリと後ずさっている。

 距離が近くなり、細かな部分が見えはじめた。巨大な竜だが、一般的なワイバーンとは違うようだ。ダークシルバーの鱗に深紅の瞳、口元から伸びる二本の牙は半透明である。材質やサイズ、多少の骨格が違うだけの量産モンスターとは違う。あからさまなレアデザインだ。

 近付けば近付くほど、その大きさが分かる。三人は、脱兎の如く逃げ出した。迫力という点では、イザヴェル上では類を見ない。例え町の中が安全だと言われても逃げざるを得ないだろう。

 逃げる三人の背後で、雷鳴のような音が鳴る。

 外郭に位置する木造の建物が、まるで紙でできたミニチュアハウスのようにひしゃげた。

 振り向いたラザールが悲鳴を上げて、バランスを崩して尻餅をつく。

「コイツ、町ん中に入ってきてんぞ!」

 叫ぶ声は咆哮によりかき消される。

 付近のプレイヤーは全員が聴力を奪われ、無音の世界の中、業火を見る。

 ジン達は、ギリギリで行使されたヴァンサンの防御魔法で生き延びたが、それを貫いた一撃に体力値が赤くなっていた。

 それ以外、近辺は焦土となり果てる。

「逃げろ!逃げろ!次ぁねぇぞ!」

 聴力がやられて誰にも聞こえない。

 両手を前に突き出し、魔法を使ったままの体勢で震えるヴァンサンと、腰を抜かしたラザールの襟首を掴んだジンは、全力で中心地に向けて走り出した。

 聴力が戻りつつあった。後ろからの、大気を震わす唸りに鳥肌の立つ思いだ。

 船の帆が一気に開くような、それよりももっと重たく低音の利いた、爆音のような翼の羽ばたく音が聞こえ、三人の上を巨竜が跳ぶ。

 影が地を覆い、通り過ぎ、突風と共に巨体が三人の前に着地する。そのまま鎌首を持ち上げると、中央のドームに向けて火山弾のような燃え盛る炎の塊を噴出する。轟音と爆風が一帯を吹き飛ばし、ドームの三分の一を倒壊させた。

『生きてるやつは逃げろ!出来る限り遠くへ、テレポート可能なやつは、近くの仲間を連れて本部まで逃げろ!』

 辺境方面軍、分隊の音声チャットグループは混乱の渦中にあり、その言葉をしっかりと聞いていた者は殆どいなかっただろう。

 ステータス上から、既に数人の名前がグレーアウトしている。

 現実世界の肉体は、激しい心音を奏でているだろう。今まで遭遇したことのない圧倒的な力を持ったモンスターの登場と、それに駆逐される部下達の悲鳴が、ジンの心を絶望の沼底に引きずり込んでいく。

 例えば、自分が知っている最も強いレベルのプレイヤー、バサラであっても、この竜に勝てるところが想像できない。

 今起きていることに対して、理解ができなかった。

 ルールは崩壊したのだろうか。

 これはただのイベントの一環なのだろうか。

 バグか。

 ハッキングされ、データが破壊されたのだろうか。

 公式の回答を聞いて安心したい気持ちになった。一刻も早くこの世界を抜け出し、安全なところで状況の確認をしたい。

 このまま、ログオフを選択しよう。この場から逃げ出そう。そう考えた矢先、巨大な竜は翼を広げ、その山のような体躯を空に浮かべた。

 風圧が、辺りの瓦礫を吹き飛ばす。

 空中で方向転換し、ジン達の方へ体を向けた。山ほどの巨体が高く浮いている。獲物を見る瞳が、紅く耀きを増していた。

 鼻から、ゴゥと炎が漏れ出る。特大のブレスがくると戦慄した。が、竜は何もせず、翼を一際大きく羽ばたかせると、東の空へと向けて飛びはじめた。

 風圧に耐え、その後空を見上げると、竜の姿は小さくなり、そして彼方の山間に姿を消す。

『全軍、被害状況を確認し、速やかに報告せよ』

 ジンの口からは、思ったよりも冷静に言葉が出ていた。ラザールとヴァンサンが、両わきで座り込んでいるせいだろう。

「まだ生きてるぞ。お前ら、立て。きっとみんな混乱してる。気丈に振る舞え」

 二人の頭を殴り、そのジン自身が座り込んだ。

「ジンさん」

 一分くらいしてから、ようやくヴァンサンが口を開いた。

「何だ?」

「少し休んでからで良いですか?」

 ラザールはまだ腰を抜かしている。仮想世界でも、立てなくなるような状況はあるらしい。まさにジン自身がその状態にあった。

「そうだな、そうしよう。ちょっと驚いたもんな」

 町を焦がした炎がまだ消えずに、拡がりつつある。熱を帯びた風に、ストーンブレッドに居たプレイヤーは肝を冷やしていた。


「ストーンブレッドが壊滅状態らしい」

 カヤの一言に、セシリーとタクヤが眼をパチパチとさせた。

「情報屋からの連絡だったんだけど、巨大な竜がストーンブレッドを焼き払ったらしい」

「またまた。システム上あり得ないでしょ?」

 セシリーが笑いながらカヤの肩をペシペシと叩く。片手で押さえた口から、軽やかな笑い声が漏れる。カヤはこういう冗談は言わない。だから、情報屋の悪ふざけだと思った。だが、カヤの顔は真剣なままで、情報屋からの報告が嘘ではないと悟る。冗談を言わないカヤが真面目に話しているのだ。

「嘘かどうかはすぐ分かると思う。スピアーがもうすぐ到着するから。それに、移動中にそれらしい咆哮を聞いたって連絡があったの。この辺、ワイバーン増えてるから気にしなかったんだけど、ね」

「ミシェルの件もあるし、何となくホントっぽいね」

 タクヤは信じたらしい。片手を肘に添えて、もう片方の手を口元に添える。考え込む素振りを見せたが、首を横に振った。

「この二日くらいで色々ありすぎるね。何かがおかしくなってるんじゃないかな?」

「ログオフしたら色々調べてみる。私も違和感とか感じてることがあるし、心当たりもあるから」

 カヤの頭にサラハの顔が浮かぶ。

 ただちょっと物知りでサーバーの情報を見るなんて普通じゃない。一般のプレイヤーではない。もしかすると開発者の一人なのかもしれない。

 全てではなくても、今回の出来事に関して少しは知っている。そんな気がしていた。

 ミシェルの謎の力も、ストーンブレッドが襲われたことも、辿っていくと同じところに行き着くのではないか。

 何かが始まっている。

 カヤの勘は、それを予感していた。



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