遼二は空っぽになった部屋を無感動に見ながら、焼酎のビンの蓋を捻った。そして、そのままラッパ飲みに喉を鳴らして、まるで水でも飲むようにして飲む。四分の一程飲んだところで、焼けるような感覚に我慢が出来なくなり、咳き込んだ。
ようやく空いたな。そんな気分でベッドに横になる。
若い女の匂いがした。シャンプーや化粧品の匂いではなく、女性から発せられる独特な匂いだ。それが、何だか懐かしくすら感じられる。
3日程、毎晩殆ど寝ずに、女の寝顔を見て過ごした。その対象が姿を消すと、意外にも寂しく感じられるものだ。帰って来て寝ている姿を見るのが、少し楽しみになっていたのかもしれない。少なからず、あの女に興味はあったのだろう。
普通の女にはあまり興味を示さないのに、どうして吸血鬼の女には興味を示すのか、遼二自身全く分からない。興味を示すと言っても、女性に対する興味では無く、別の歪んだ何かである事は確かだが。
もしかすると、死んだ姉に重なるところがあるのかもしれない。
目を閉じると、まるで隣で寝ているかのような錯覚を覚えた。
すぐにまた、酒とタバコの臭いで充満した部屋に戻ってしまうだろうが、今夜はまだ匂いが残っている。そう思いつつ、遼二は深い眠りに落ちていった。